- アパートの風呂場 -

学生の頃住んでいたアパートで起きた話です。

学費を払うのでいっぱいいっぱいだったので
いわくつきの家賃の安いアパートに住んでいました。
いわくつきと言っても、もう十年くらい前に
痴情のもつれとかなんとかで
女性がお風呂で手首を切って死んだというよくある話だったし
十年も経ってるんだから多少脚色されてるだろうから
恐らく痴情のもつれはあってても自殺まではしてないだろうと軽い気持ちで入居したのです。

ある日学校が終わり、アパートに戻るといつもと違う雰囲気を感じましたが
部活動で疲れていたし汗もかいているので早くシャワーを浴びたくて
お風呂場に駆け込みました。

さっそくシャワーを浴びていると
排水溝の方から「コンコンコン」という
音が鳴り出したかと思うと途切れたり、
途切れたかと思うと鳴り出したりしました。

その頃はもう風呂場で起こった事件のことはすっかり忘れていたので
なんとも思わずに体を洗っていたのですが、
だんだんと音が近づいてくるのでさすがに気味が悪くなり
本当に排水溝から音が出ているのか確かめるために
耳を近づけてみるとさっきまで鳴っていた音が急に止みました。

気のせいか、と思って
また体を流しているときに気が付きました。
排水溝から目だけがこちらを睨んでいることに。

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