- 窓を引っ掻く音 -

ある蒸し暑い夏の夜のこと。
窓を開けて、(といっても網戸は閉めているが)
寝ていると遠くの方から犬がワンワンと吠え立てるのが聞こえた。

どろぼうでも来たか、なんてのんきに考えているのも
面倒くさくなり、そのまま寝ようかと寝返りをうったとき
犬の断末魔のような叫び声が窓の方から聞こえ、
少し怖くなった僕は窓を閉め、鍵をした。

30分くらい経ったが何も起きないので僕は眠りに落ちていった。

と、完全に眠ったか眠ってないかのところで
網戸ををカリカリ引っ掻くような音で目が覚めた。
寝返りをうちながら窓の方を見ると、
どうやら犬のようなものが爪か何かでカリカリと引っ掻いているらしい。

暑さでイライラしていたのもあり、
追い払ってやろうと思いつき窓の方へ近づいたとき僕は理解した。
「犬が引っ掻いてるのではない、人間が犬の手を持って引っ掻いている」のだと。
犬の後ろにはっきりと人間くらいの大きさの黒い影が見えたのだ。

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

窓の方をよく見てみると
血のような赤いものがついている。

身の危険を感じ、父親を起こした僕は
父と一緒にバットを持って玄関から僕の部屋の窓へ向かった。
そこにはカリカリと雨戸を引っ掻いている傷ついた犬だけだった。
どうやら腕を怪我しているらしく雨戸に大量の血液が付着していた。

それから飼い主を呼び、犬を手当てしたとき
腕に鋭利な刃物で傷つけられた跡があったので一応警察に連絡したが、
結局窓ガラスに写った人間のような黒い影と、
なぜ犬が雨戸を引っ掻いていたかの謎は解けなかった。

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