うちの父が土木関係でバリバリ現役だったころ。
ある神社の近くの森を切り開くことになったが
いわくつきらしくどこの土木関係者も引き受けなかったそうな。
そこで父はもともとそういう霊感なんぞない方だったし
なにしろ報酬が高かったので引き受けたそうだ。
弟子を数人引き連れてさっそく工事を開始し、
すでに3分の2は切り開くことができたころ
木の根元にたくさん花束の置かれた大きな樫の樹が見つかったそう。
父たちは神社の神主に相談したところ
「あぁ、あの木ですか…えぇ、どうぞ切ってやってください…」
と言ったので怖いもの知らずの父は弟子たちが
止めるのにもかかわらずバッサリ真ん中から切ってしまった。
その時は何もなかった父だったが
その後作業を続けているとなんだか体が重い。
ちょっと一休みしようと切り株に腰かけたのがいけなかった。
弟子たちが切った木が丁度父の上に落ちてきたのだ。
一命は取り留めたが、あばら骨を数本折ってしまい
何か月か病院のお世話になってしまったらしい。
これだけ聞くと別に樹の崇りでもなんでもなさそうだが、
父の病室を訪れた神社の神主が言うことには
「実は最近あの樹で首を吊った学生がいて
弔いのためにもあの樹は残しておきたかった」のだそうだ。
だが、父は知っていた。
あの樹の下の地面に妙に掘り返し埋め返しした跡が残っていたのを。